忘れたくない

ひとつ

おい、浩平。目を覚ませよ、浩平。
……洋平? 洋平じゃないか。随分久しぶりだ。やっと会えたな。
ああ、やっと会えたな、浩平。こう言ってはなんだが、待ちくたびれたよ。
そりゃないぜ、洋平。俺だって、すぐにでも会いたかったさ。
はは、冗談だよ。……でも、なあ、浩平。俺、もう浩平と離れ離れになるなんて御免だ。
俺もそう思うよ、洋平。今度こそ、ずっと一緒にいよう。
うん、浩平もそう言うと思った。だから、俺、浩平が目覚めるまで、どうやったらずっと一緒にいられるか考えてたんだ。
じゃあ、俺を起こしたってことは、良いことを思いついたんだろ。教えろよ、洋平。
浩平、あのな。簡単な話だ。全部、ひとつになってしまえば良いんだよ。そうしたら離れることなんてないだろ?
成程、良い考えだな。しかし、どうすればひとつになれるんだろう。そっちにいけば良いのかな。洋平、ここか?
浩平、こっち。うん、そう……。……なんだか、あたたかいな。これでひとつになれたのかな。
うん、きっとそうだ。……俺が最後に洋平に触れた時は、冬の海みたいにつめたかったから、今、凄く嬉しいよ。
ごめんよ、浩平。でも今度は、ずっと一緒だ。つめたくなる時も一緒だ。
洋平。……そうだな、洋平。ずっと、ずっと一緒だ。それじゃあ、そろそろ行こう。
浩平、きっとあっちだ。もう、お喋りは一旦お終いだな。
もっと話したかったけど、またすぐ会えるよな、洋平。
何言ってるんだ、浩平。俺たち、もうずっと一緒なんだぜ。
うん、そうだよな。俺たち、ずっと一緒だ。じゃあ、またな、洋平。
ああ、またな、浩平。