尾形百之助
食べてさえもらえぬ鴨は何処ゆけばいいもう飛ぶことも叶わないのに
透明な糸を垂らす手狙えども血の池からは射程圏外
指先で掠めることも叶わずに光の下で蝶はただ舞う
視界の袖揺らす風は心臓の吐いた息か問う枯れ尾花
「違う」と言い抱き留められたそれだけが本当だったきっとそれだけ
月島基
開口す「あの子の髪がくせっ毛で」伏せた睫毛の真直ぐな影
鶴見篤四郎
隙間なく掬びて掬い飲むとすとも潜りて癒えぬ喉の渇きよ
指先を飛び立つ鳥の羽ばたきはいつか奏でた狂詩曲
灯火が消え去った部屋に残された数多の蝋とただひとり
二階堂浩平+二階堂洋平
屍になったのではないこの声に宿る言葉に君はなった