一滴が染め上げる夜その向こうきっと朝日は僕らを嫌う
一〇話
夏の足音ひとつ通り抜けてく 二人の間 一人の隙間
すぐ側にあった気配はもぬけの殻蛹の羽化する匂いだけある
衣替えしそびれた袖雫垂るあと少しだけ君の残雨を
六三話
振り上げた拳を濡らすその熱さ月夜の下でふたり犯した
虎杖悠仁
溶けぬまま胃の底住まう爪先がもう喉奥まで迫ってる
乙骨憂太+五条悟
黒い背は広くってその腕に抱く温度は知れずただ在るを知る
五条悟
無重力いつかの夢は地に足つけず繰り返される今に漂う
灰原雄+七海建人
穢れ抱く鈍に咲く花々よ 即ち散れども狂い咲け 春
顧みに見詰むる花の生首を捲る頁にひとつ挿す 君
伏黒甚爾
傷跡は真一文字を削る影上向くことを戒めるは誰
吉野順平
どこまでも泳いでゆける尾の鰭を揺らして触れた逆さまの鉢
むたみわ
いっぱいに張られた藍と管たちは君を知ってる 針が寂しい